令和2年度 CLT設計者向け実務講習会

Q&A

 受講者様から寄せられたご質問に対する回答を掲載しています。

(2021/1/5更新)

No.講習質問内容回答
1 WEB 【樹種について】

マザーボードは単種の樹種で構成されるのでしょうか? 無垢の木である特徴の手触り(やわらかさ)や香りなどは残るのでしょうか?
一般的には単種の樹種で構成されていますが、外層と内層で樹種を使い分けたCLTも存在します。手触りや香り等の木の特徴は、CLTになっても損なわれるものではありません。
2 WEB 【ルート1における鉛直構面の構成】

構造耐力上支障のある開口・欠き込みとは、どのくらいのものですか?(具体的な大きさ等、基準がありますか?)
告示611号第十第2項二号をご覧ください。
(参考資料)
CLT関連告示等解説書((公財)日本住宅・木材技術センター)のP.37
3 京都 【資料4 - p7】

軒天をCLTパネルで伸ばした場合、軒裏通気は棟換気でとる形でしょうか?
置き屋根の小屋裏については結露防止と遮熱対策の両性能を考える必要があります。
結露防止の意味では棟換気による脱気は有効な方法です。遮熱対策ではある程度の換気が必要となりますので、切妻屋根または入母屋屋根にして妻換気口を取る方法が有効です。これらの方法が取れない場合はやむなく軒裏換気口を設けることになりますが、その場合は防耐火の観点から防火ダンパー付き軒裏換気口を設置してください。
下記の絵の場合通気見切は1時間準耐火の場合でもCLTで防火をとっているため、1時間のもでなくても良いでしょうか?(あくまでも通気のための部材として30分等でもOKですか?)
構造躯体を準耐火燃えしろ設計で行っているならば、通気見切りに防火性能を持たせなくてもよいです。
内装あらわしの場合、養生はどのようにするのでしょうか?建方で汚れないものですか? CLTの発注先に、現わし表面の撥水処理を依頼してください。また、建て方工事で雨養生に気を付け、シート掛けを必ず行ってください。
4 京都 【資料1 - p1~12】

木材の調達に関して施工時期により(木材の伐採時期によるが)調達、乾燥、加工と現場への供給までに時間がかかると思われるが、調達から供給までの一般的な流れ(期間)を御教示頂きたい。
テキストでお配りした「手引き」の6-8頁(6.1.4工程計画)に、つくば実験棟の実例を掲載していますので、ご参考にしてください。
5 京都 【説明資料 - p49】

ルート1において、床パネルサイズの、制約はないのか?
告示第611号において床パネルは、寸法の規定がありません。ただし、告示第1024号で基準強度が定められていることが必要です。
6 京都 【資料4 - p99】

CLTの小口の水分の吸収に関しての言及があったが、表しとした場合の室内にて発生する湿気程度であれば支障ないのか。
室内でCLT木口が現わしになっている物件は数多くありますが、問題が生じたケースはありません。
7 京都 【資料2 - p25】

CLTの収縮率はどの程度か。
ラミナの柾目方向・板目方向の収縮を繊維方向のラミナが接着拘束することにより、繊維方向の収縮率が支配的になります。したがってスギの気乾収縮率0.02%(繊維方向)と考えられます。
8 京都 【資料4 - p100】

内部断熱とした場合、内部側にシートを設置すれば支障ないか、設備計画を考慮した場合、内部仕上をする事が多くなると思うが、それであれば内断熱で、シート貼りで支障無いように思うのですが…。
ご指摘の通り、内断熱の場合は断熱材の室内側で防湿シートを張ってください。
9 京都 【資料4 - p113】

CLTの歩行振動のスパン表があるが、P79において7層7プライは長期荷重を支持する床版、天井版としては使用出来ないという事なので、現場は、5層7プライが、一般的に多く使用されている仕様なのか。
床版に使用するCLTは5層7プライが一般的です。理由は強軸方向の断面性能が7層7プライより高いためです。床振動では両者の仕様について適切なスパンを表示していますが、7層7プライは強軸方向の基準強度が示されていないことから、ご指摘の通り5層7プライを使用してください。
10 京都 【説明資料 - p118】

接着剤の種類の分類で、使用環境のAとBの違いについて説明が欲しい。具体的な使い分け等。
使用環境の概要は、以下の通りです。
A・・・直接外気にさらされる環境
火災時に高度な接着性能を要する環境
B・・・火災時に高度な接着性能を要する環境
C・・・耐水性、耐候性、耐熱性について通常に使用する範囲の環境
くわしくは「2019年度版 実務者のためのCLT建築物設計の手引き」2・3ページ、表2-1-2(直交集成板の日本農林規格で定義されている用語)をご覧ください。
代表的な接着剤は、使用環境Aではレゾルシノール・フェノール樹脂、使用環境Bでは水性高分子イソシアネート系樹脂があります。
11 京都 【資料3】

地震で構造躯体が損傷した際、大判①など補修(復元)の方法というのは、あるでしょうか?
補修の方法が示されている図書などは、ありません。(大判は、正しくは大版です。)
12 京都 【説明資料 p83】

CLT現しで屋外の屋根や、床とすることは可能でしょうか。また、できるための、表層処理などがあれば知りたい。
CLT現わしの屋根・床は、できません。使用環境としては壁にくらべ過酷な条件となる部位で、暴露試験の結果でも使用に耐えない状況です。現状では表面処理での対策方法はありません。
13 WEB 【複合構造でのクロスマーク表示金物の使用】

ルート1用の規格金物にクロスマーク金物が該当するとのお話でしたが、鉄骨やRCとの複合構造とした際にもクロスマーク金物を使用することはできるのでしょうか。
クロスマーク金物の構造特性は、設計施工マニュアル(日本住宅・木材技術センター発行)に示されているので、そのデータを用いて使用可能かを構造検討することができます。
14 WEB 【モジュールについて】

モジュールについてですが、以前に900モジュールではなく910モジュールの方が良いとお聞きしましたが、1000の方が良いのでしょうか?
900より一般建材寸法の910が適当です。さらに1000の方がバリアフリーの観点から良いと考えます。
15 WEB 【鉛直構面の開口不可について】

説明資料p47について、エアコンや換気の開口も不可ということでしょうか。
引きボルト接合に必要な開口以外は、大きさ位置に関係なく不可となります。
【耐力壁に考慮できない耐力壁について】

説明資料p47「長さ90cm未満、2m超の耐力壁」、説明資料p48「直下に耐力壁がない耐力壁」は耐力壁にできませんが、偏心率には考慮するイメージでしょうか。

また、偏心率を満足できない場合に、一部の耐力壁の端部金物を省略して、せん断金物のみとすれば、その一部の耐力壁は剛性に考慮しないとすることはできますか。
直下に耐力壁がない場合は、耐力壁とできません。また、水平力を負担しないので剛心算定において算定対象にしません。



左記の方法は可能です。
【せん断耐力に考慮するたれ壁・腰壁について】

説明資料p56に耐力式が示されていますが、ルート1における偏心率の計算の際、たれ壁や腰壁による剛性はどのように算定されますか。
Qaを算定する式の1.5nが、たれ壁、腰壁による剛性として耐力壁の許容面内せん断力に加算されます。
16 WEB 【材料の使い分けについて】

木造の設計は未経験でして、初歩的な質問で恐縮ですが、教えてください。
木質材料の種類は大きく以下の4つに分かれると思います。
・合板
・LVL
・集成材
・CLT
違いは分かるのですが、それぞれ一般的にどの様な使い分けがされているのかを教えて頂けないでしょうか。宜しくお願い致します。
大まかには、LVLと集成材は、線材であることから、柱や梁、土台に使用されます。いっぽう合板とCLTは、面材であることから、壁や床、天井に使用されます。
それぞれ接着して製造しますが、材料が単板か挽き板かという違いがあります。また、木材には異方性があり、どの方向で使用するかで強度性能等が大きく異なりますので、接着する際の積層方向が製品としての性能に大きく影響します。
ご使用になる際は、要求される性能と上記各製品の特徴をご確認いただければと存じます。
17 WEB 【温熱快適性で示された実測値について】

39-41ページで示された、CLT建築の実測値についてお教えください。たいへん興味深い内容なのですが、この実測の際にCLT建築は窓などを通した換気は行われたのでしょうか。それとも密閉された状況で6月から翌年2月まで測定をしたのでしょうか。

また、そもそも窓がどの程度ある建物であったかによっても、この数値の受け止め方は変わるように思います。一般的な住宅を想定し窓が設けられていたのかと想像しましたが、実際にはいかがだったのでしょうか。
これらの測定データはつくばに建設されたCLT実験棟のものです。上段のデータは冬季3日間で空調を1日に2回運転した時の自然室温です。無人での測定で窓の開閉はありません。下段のデータは6月から2月までの自然室温です。多少の人の出入りはありますが窓の開閉はほぼありません。開口率は外皮面積に対して9.2%で戸建て住宅としては標準的なものです。
【地震による損傷の補強方法について】

実大震動実験の動画を興味深く拝見しました。また、CLT建築は地震によって倒壊するリスクが非常に小さいということを理解しました。

そこで疑問に思いましたのが、大きな地震により出隅部や、垂れ壁・腰壁と耐力壁接合部などに割裂が生じたり、金具が損傷した場合の補強方法です。

地震で倒壊しないならば、地震で発生した損傷を適切に補強することによりその後も使い続けたいと考えます。しかしCLTは部材として一体で強度を発揮するのであれば、損傷が発生したCLTはまるごと取り換えざるを得ないのかもしれないとの心配を抱きました。それは建物全体の解体にも等しい事態になってしまいます。

CLTの一部が割裂などの損傷を負った場合に、建物全体を解体せずに補強をすることは可能なのでしょうか。また動画にあったように、2つのCLTを接合する金具が降伏したり、ビスがすっかり浮き上がったりした場合に、解体によりパネルどうしを一度離すことなく、補強することはできるのでしょうか。
振動台の実験は、何度も大地震時を建物に作用させ、安全限界を超える変形で損傷をさせています。RC造におきかえれば、柱、梁が亀裂により損傷している状態で倒壊している状態といえます。共に倒れていない場合でも建物を補修し再利用することが非常に困難な損傷が生じているといえます。

講習では、接合部、CLTの割裂破壊が生じても、実験と同様に倒壊に至らないのなら、人的被害を最小限に留めることができる可能性のあることをお話しています。再利用に関することではありません。

破壊に至った建物を補修し再利用することができるかですが、大きく損傷して倒壊しなかった建物を再利用することが可能かどうかは、個別の損傷状況を調査し設計者が判断することになる内容なので、多様な状態が想定されることから「補強することができるかどうか」は、コメントができません。ただ、今までの震災事例からは、倒れてなかったが利用不可で倒壊と等しい危険度判定となる建物は、ほぼ解体対象であったと思います。
【燃えしろ設計の内装について】

防耐火性能で要求されている内装は、穴をあけたり削ったりしないことが建築基準法上は大切ですが、建物をユーザーに引き渡した後は、ユーザー側でものをかけるためのフックを打ち付けたり、その後それを撤去したりして結果的に表面仕上げが傷つくことが考えられます。また電気配線を壁内におさめようとして壁を削り、表面を平滑に整えるといったことも起きるように思います。

ただしCLTの燃えしろ設計であれば、部材の厚みは30ミリ単位で増えていくことから、要求される燃えしろに対し余裕があることも考えられ、その余裕しろの部分は穴をあけたり削ったりしてもよいように思います。

このようなことに対して、告示などの法令やガイドラインなどにおいて「してよいこと・いけないこと」を示しているものがあれば、お教えください。
ユーザーに引き渡した後に防耐火性能に支障を及ぼすことがないような指導事項は建築基準法第8条(維持管理)に所有者の努力義務として記載されていますが具体的な内容ではありません。コンセントに関しては100cm2以下の開口であれば防火被覆の必要はないと「図解 木造住宅・建築物の防・耐火設計の手引き」(日本住宅・木材技術センター 発行)P・203に書かれています。また準耐火建築物は主要構造部の規制ですのでそれ以外の部分であれば規制対象から外れます。法的には上記のような事になりますが、引き渡し物件に建物の使用方法を記したマニュアルが必要だと思います。
 

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